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QI 3 術前の診断的内視鏡検査

治療前評価

実施率の計算方法

分子:
     術前に診断的内視鏡検査が施行され、検査結果(腫瘍の部位、肉眼型、腫瘍の大きさ(環周率含む)、予想される深達度(早期癌の場合)を含む)が診療録に記載されている患者数

分母:      待期手術を受けた大腸癌患者数

 

参照ガイドライン/先行研究

特になし

 

根拠

 患者のアウトカム改善に結びつくという直接のエビデンスはないが、チーム医療において、内視鏡検査所見の記載による医療者間での情報の共有は非常に重要である。これら情報共有の欠如により、手術室での非効率な作業が増えたり、不十分な手術(郭清)が行われたり、大腸の不適切な部位を切除したりすることも起こり得る。腫瘍の部位、肉眼型、腫瘍の大きさ(腫瘍径、環周率など)、予想される内視鏡診断的深達度は、大腸癌の手術を行う上で必須の情報である。腫瘍の部位は切除範囲の決定に必須であり、肉眼型、腫瘍の大きさ等の所見から総合的に判断される深達度は、リンパ節郭清度の決定に重要な情報である。「大腸癌治療ガイドライン(医師用・2014年版)」では、T1(SM)癌に対してD2郭清、T3(SS/A)以深の癌(Stage II・III 大腸癌)に対してD3郭清を行うことを推奨している。このように、深達度に応じてリンパ節郭清の程度を決定するため、上記の情報が診療録に記載されていることは、重要な診療の質の反映と考えられる。

 以上より、治療前内視鏡検査による詳細な病変の観察結果を記録しておくことは、治療方針の決定に重要な情報であることから、待期手術を受ける大腸癌患者は、術前に診断的内視鏡検査が行われ、腫瘍の部位、肉眼型、腫瘍の大きさ(腫瘍径、環周率など)、予想される内視鏡診断的深達度(早期癌の場合)を含む検査結果が診療録に記載されるべきである。

 

参考文献

1.  Goldsmith D, McDermott D, Safran C. Improving cancer related symptom management with collaborative healthware. Medinfo;11:217-21.2004.

2.  Pereira TC, Liu Y, Silverman JF. Critical values in surgical pathology. American journal of clinical pathology;122:201-5.2004.

3.  LiVolsi VA. Critical values in anatomic pathology: how do we communicate? American journal of clinical pathology;122:171-2.2004.

4.  Walsh D, Zhukovsky DS. Communication in palliative medicine: a pilot study of a problem list to capture complex medical information. The American journal of hospice & palliative care;21:365-71.2004.

5.  大腸癌研究会編. 大腸癌治療ガイドライン 医師用 2014年版. 東京: 金原出版; 2014.