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QI27 内視鏡的摘除を受けた患者に対する追加手術

内視鏡治療

実施率の計算方法

分子:
     外科的追加腸切除(リンパ節郭清を伴う)が施行されているか、もしくは施行されない理由が診療録に記載されている患者数

分母:      内視鏡的摘除を受け、組織学的検索にて脈管侵襲陽性、組織型が低分化腺癌・未分化癌、pSM浸潤距離1000μm以上、pSM垂直断端陽性、浸潤先進部の簇出(budding)Grade 2/3(2010年1月以降の症例)のいずれかの所見を認めたpT1(SM)大腸癌患者数
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(前版)

分子:
     外科的追加腸切除(リンパ節郭清を伴う)が施行されているか、もしくは施行されない理由が診療録に記載されている患者数

分母:      内視鏡的摘除を受け、組織学的検索にて脈管侵襲陽性、組織型が低分化腺癌・未分化癌、pSM浸潤距離1000μm以上、pSM垂直断端陽性のいずれかの所見を認めた大腸癌患者数
■変更理由
「大腸癌治療ガイドライン医師用2009年版」より、内視鏡的摘除後の追加治療の適応基準(CQ 1)に浸潤先進部の簇出に関する項目が追加された。これを受けて、2010年以降の症例については、対象(分母)に「浸潤先進部の簇出がGrade2/3のもの」を追加することとした。

 

参照ガイドライン/先行研究

大腸癌治療ガイドライン(医師用・2005年版)

 

根拠

 大腸癌研究会のプロジェクト研究「sm癌の取り扱い」では、SM層における癌の組織型(分化度)は有意にリンパ節転移率と相関したことを報告している。pT1(SM)大腸癌865例の検討においても、リンパ管侵襲・静脈侵襲はそれぞれ有意なリンパ節転移のリスク因子であった。また、pT1(SM)癌の浸潤距離がリンパ節転移率と相関することが示されている。非有茎性腫瘍でpSM浸潤距離が1000μm未満の場合にはリンパ節転移を認めなかったが、pSM浸潤距離が1000μm以上では約10%にリンパ節転移を認めた。これらの結果に基づき、大腸癌治療ガイドライン(医師用・2005年版)では、内視鏡的摘除標本における病理所見で、脈管侵襲陽性、低分化・未分化な組織型、pSM浸潤距離1000μm以上のいずれかを認めた場合には、リンパ節転移の可能性があることから、追加手術を考慮することを推奨している。また、pSM垂直断端陽性であった場合には、局所に癌が遺残している可能性が高いため、追加手術の適応となる。また、大腸癌研究会のプロジェクト研究から、リンパ節転移危険因子としての簇出(budding)の重要性が示されたため、大腸癌治療ガイドライン(医師用・2010年版)では、浸潤先進部の簇出(budding)Grade2/3を追加切除を考慮する因子に追加した。これらの所見およびリンパ節転移の危険性について、患者に十分説明した上で、追加手術を行うか否かを決定する。患者が追加手術を望まない場合、または手術による合併症の危険が高いと判断した場合には、十分なインフォームドコンセントの上、手術を行わない理由を診療録に記載しておくことが必要である。
 以上より、内視鏡的摘除を受け、組織学的検索にて、脈管侵襲陽性、組織型が低分化腺癌・未分化癌、pSM 浸潤距離1000μm以上、pSM垂直断端陽性、浸潤先進部の簇出(budding)がGrade2または3のいずれかの所見を認めた大腸癌患者では、外科的追加腸切除(リンパ節郭清を伴う)が施行されるか、施行されない場合には理由が診療録に記載されるべきである。

 

 

参考文献

1.  Ueno H, Mochizuki H, Hashiguchi Y, et al. Risk factors for an adverse outcome in early invasive colorectal carcinoma. Gastroenterology 2004;127:385-94.

2.  Kitajima K, Fujimori T, Fujii S, et al. Correlations between lymph node metastasis and depth of submucosal invasion in submucosal invasive colorectal carcinoma: a Japanese collaborative study. J Gastroenterol 2004;39:534-43.

3.  喜多嶋和晃、藤森孝博、藤井茂彦、武田純、市川一仁、大倉康男、石黒信吾、岩下明徳、加藤洋、下田忠和、味岡洋一、渡邊聡明、武藤徹一郎、長廻紘. 大腸sm癌の取り扱い. In: 武藤徹一郎、渡辺英伸、杉原健一、多田正大, ed. 大腸疾患NOW 2004. 東京: 医薬ジャーナル社; 2004.

4.  大腸癌研究会編. 大腸癌治療ガイドライン 医師用 2014年版. 東京: 金原出版; 2014.