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QI29 転移・再発大腸癌患者に対するインフォームドコンセント

転移・再発癌の治療

実施率の計算方法

分子:
     インフォームドコンセント(複数の治療法の提示、期待される効果、起こり得る合併症、有害事象、治療後の Quality of Life(QOL)など)が施行され、その内容が診療録に記載されている患者数

分母:      Stage IVまたは再発大腸癌患者数

 

参照ガイドライン/先行研究

大腸癌治療ガイドライン(医師用・2014年版)

 

根拠

 複数の研究から、転移・再発巣に対して治癒切除が行われた場合、他の治療法に比較して予後が良好であることが示されていることに基づき、大腸癌治療ガイドライン(医師用・2014年版)では、転移・再発巣に対して、完全切除が可能な場合は積極的に手術を行うことを推奨している。現状では切除不能進行・再発大腸癌の治癒は不可能であるが、新規抗癌剤の出現やレジメンの開発により、化学療法を行うことで生存期間の延長や、一部の患者では切除可能への移行が期待できる。その他、放射線治療、緩和治療、無治療などの選択肢がある。このように、切除が行われない進行・再発大腸癌に対しても治療の選択肢は多く、医師と患者間で、期待される治療の効果と不利益に関して話し合いをすることは必須である。特に、切除不能進行・再発大腸癌を化学療法や放射線治療のみで治癒させることを望むことが非常に困難な現状において、治療のもたらす効果とその副作用は、患者のQOLに大きく影響する問題であり、十分な話し合いの上で治療方針を決定することが推奨される。また、話し合いの内容については診療録に記載し、治療にかかわる複数の医療関係者が統一した理解を共有し、患者の信頼を損なわないように努めなければならない。
以上より、StageⅣまたは再発大腸癌患者は、考えられる複数の治療法の提示を受け、期待される効果、起こり得る合併症、有害事象、治療後のQOLを含むインフォームドコンセントが行われるべきである。また、その内容が診療録に記載されるべきである。

 

参考文献

1.  大腸癌研究会編. 大腸癌治療ガイドライン 医師用 2014 年版. 東京: 金原出版; 2014.

2.  Kobayashi H, Mochizuki H, Sugihara K, et al. Characteristics of recurrence and surveillance tools after curative resection for colorectal cancer: a multicenter study. Surgery 2007;141:67-75.

3.  Murata S, Moriya Y, Akasu T, Fujita S, Sugihara K. Resection of both hepatic and pulmonary metastases in patients with colorectal carcinoma. Cancer 1998;83:1086-93.

4.  Kobayashi K, Kawamura M, Ishihara T. Surgical treatment for both pulmonary and hepatic metastases from colorectal cancer. The Journal of thoracic and cardiovascular surgery 1999;118:1090-6.

5.  石黒めぐみ, 小林宏寿, 上野秀樹, 橋口陽二郎, 望月英隆. 大腸癌術後のフォローアップ法と諸問題. In: 外科(0016-593X); 2006:1049-57.

6.  石黒めぐみ, 小林宏寿, 上野秀樹, 橋口陽二郎, 望月英隆. 大腸癌術後の適切なフォローアップ法とそのエビデンス. 外科(0016-593X) 2006;68:405-10.

7.  Scheithauer W, Rosen H, Kornek GV, Sebesta C, Depisch D. Randomised comparison of combination chemotherapy plus supportive care with supportive care alone in patients with metastatic colorectal cancer. Bmj 1993;306:752-5.