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QI30 放射線治療を受ける直腸癌患者に対するインフォームドコンセント

転移・再発癌の治療

実施率の計算方法

分子:
     期待される効果および起こり得る合併症についてインフォームドコンセントが行われた患者数

分母:      放射線治療を受けた直腸癌患者数

 

参照ガイドライン/先行研究

大腸癌治療ガイドライン(医師用・2014年版)

 

根拠

 直腸癌に対する放射線治療については、海外でのランダム化比較試験やメタアナリシスでは手術後の局所再発率の低下が報告されており、欧米ではStage II~III直腸癌に対する術前の化学放射線療法が標準治療とされている。また、切除不能な局所進行・局所再発直腸癌に対して、症状緩和や延命を目的として、放射線療法(化学放射線療法)が用いられる場合もある。

一方で、放射線治療は早期・晩期合併症を起こす可能性がある。術前照射では、腸閉塞、吻合部離開(縫合不全)、創傷治癒遅延などの術後合併症が増加する可能性がある。また晩期合併症として瘻孔形成、腸閉塞、潰瘍形成、腸管穿孔、下痢、下血、肛門括約筋機能の低下、排尿障害(膀胱容積縮小による頻尿)、性機能障害、2次がんの発生などが報告されており、十分なインフォームドコンセントが必要である。直腸癌に対する放射線治療に関して、効果・合併症・有害事象についての説明を行うことによる、患者アウトカムに対する影響を検証した研究はないが、期待される効果、副作用についての情報を治療選択時に患者が提供されるのは自己決定を助ける意味で重要であり、そのような重大な情報については、説明を文書に残すことで、真摯な議論を助けると考えられる。

 以上より、放射線治療を受ける直腸癌患者は、その期待される効果および起こり得る合併症についてインフォームドコンセントが行われるべきである。

 

参考文献

1.  大腸癌研究会編. 大腸癌治療ガイドライン 医師用 2014 年版. 東京: 金原出版; 2014.

2.  杉原健一(編). ガイドラインサポートハンドブック -大腸癌-2014年版. 大阪: 医薬ジャーナル社; 2015.

3.  National Comprehensive Cancer Network. NCCN Clinical Practice Guidelines in Oncology--Rectal Cancer (Version 3. 2015). Accessed Aug 7, 2015 at http://www.nccn.org/professionals/physician_gls/pdf/rectal.pdf

4.  Kapiteijn E, Marijnen CA, Nagtegaal ID, et al. Preoperative radiotherapy combined with total mesorectal excision for resectable rectal cancer. The New England journal of medicine 2001;345:638-46.

5.  Peeters KC, Marijinen CA, Nagtegaal ID, et al: Dutch Colorectal Cancer Group: The TME trial after a median follow-up of 6 years: increased local control but no survival benefit in irradiated patients with resectable rectal carcinoma. Ann Surg 2007; 246: 693-701.

6. 松本寛, 森武生, 高橋慶一, 山口達郎, 安留道也. 直腸癌局所再発の現状わが国と欧米との比較. 消化器外科 2006;29:13-7.