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QI31 狭窄症状を有するStage IV大腸癌に対する外科的治療

転移・再発癌の治療

実施率の計算方法

分子:
     原発巣の外科的切除または原発巣緩和手術(人工肛門造設、バイパス手術、大腸ステント留置)が施行されているか、もしくは行われない理由が診療録に記載されている患者数

分母:      原発巣による狭窄症状があるStage IV大腸癌患者数

 

参照ガイドライン/先行研究

大腸癌治療ガイドライン(医師用・2014年版)

 

根拠

 大腸癌治療ガイドライン(医師用・2014年版)には、StageIVの大腸癌の治療方針として、「遠隔転移巣ならびに原発巣がともに切除可能な場合には、原発巣の根治切除を行うとともに遠隔転移巣の切除を考慮する」、「遠隔転移巣への切除は不可能であるが原発巣切除が可能な場合は、原発巣の臨床症状や原発巣が有する予後への影響を考慮して、原発巣切除の適応を決める」と記載されており、原発巣による症状(出血、高度貧血、穿通、穿孔、狭窄等)を有する場合は、原発巣の切除あるいは原発巣緩和手術を行うことを推奨している。原発巣の切除、あるいは口側に人工肛門を造設したり、バイパス手術を行うことで、腹部症状の改善、貧血の改善、経口摂取量の増加が見込め、患者の全身状態およびQuality of Life(QOL)の向上が期待できる。手術により原発巣を含めたすべての病巣を切除できない場合でも、全身状態の改善に伴い、化学療法などの手術に替わる治療を行えるようになる可能性があるため、原発巣の外科的切除または人工肛門造設等による症状の緩和や栄養状態・貧血などの全身状態の改善を図る意義は大きいと考えられる。 また、2012年からは大腸ステントが保険収載のもとに全国的に使用できるようになり、原発巣による狭窄症状に対する緩和的治療の選択肢の1つとなった。

 以上より、狭窄症状の改善は全身状態の改善およびQOLの向上に寄与することから、原発巣による狭窄症状があるStage IV大腸癌の患者は、原発巣の外科的切除、または江原発巣緩和手術(人工肛門造設、バイパス手術、大腸ステント留置)が行われるか、行われない場合はその理由が診療録に記載されるべきである。

 

参考文献

1.  大腸癌研究会編. 大腸癌治療ガイドライン 医師用 2014 年版. 東京: 金原出版; 2014.

2.  Ando K, Morita S, Higashi T, et al. Health-related quality of life among Japanese women with iron-deficiency anemia. Qual Life Res;15:1559-63.2006.

3.  Cook AD, Single R, McCahill LE. Surgical resection of primary tumors in patients who present with stage IV colorectal cancer: an analysis of surveillance, epidemiology, and end results data, 1988 to 2000. Ann Surg Oncol;12:637-45.2005.

4.  Temple LK, Hsieh L, Wong WD, Saltz L, Schrag D. Use of surgery among elderly patients with stage IV colorectal cancer. J Clin Oncol;22:3475-84.2004.

5.  杉原健一. 【Stage IV 大腸癌と診断したらどうするか】 Stage IV 大腸癌の治療方針はどう変わったか. 外科治療(0433-2644); 2007:979-83.

6.  Tilney HS, Lovegrove RE, Purkayastha S, et al. Comparison of colonic stenting and open surgery for malignant large bowel obstruction. Surg Endosc;21:225-33.2007.

7.  斉田芳久. 【大腸ステントが2012年から保険収載されましたが、その有効性・安全性は?】石黒めぐみ(編) Q&Aで綴る大腸癌診療のレジデントノート. 大腸癌FRONTIER 6(2); 166-170, 2013