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QI26 内視鏡的摘除後の病理所見の診療録への記載

内視鏡治療

実施率の計算方法

分子:
     以下の事項が診療録に記載されている患者数
 ・病変の大きさ、肉眼型、組織型
 ・pSM浸潤度の実測値(μm)(pT
1(SM)癌の場合)
 ・脈管侵襲の有無(pT1(SM)癌の場合)
 ・水平断端における癌細胞の有無
 ・垂直断端における癌細胞の有無
 ・浸潤先進部の簇出(budding)のGrade(2010年1月以降の症例)
 
分母:      内視鏡的摘除を受けた大腸癌患者数
(平成22年5月改訂) 前版を表示隠す

(前版)

分子:
     以下の事項が診療録に記載されている患者数
 ・病変の大きさ、肉眼型、組織型
 ・pSM浸潤度の実測値(μm)(pSM癌の場合)
 ・脈管侵襲の有無(pSM癌の場合)
 ・水平断端における癌細胞の有無
 ・垂直断端における癌細胞の有無

分母:      内視鏡的摘除を受けた大腸癌患者数
■変更理由
「大腸癌治療ガイドライン医師用2009年版」より、内視鏡的摘除後の追加治療の適応基準(CQ 1)に浸潤先進部の簇出に関する項目が追加された。これを受けて、2010年以降の症例については、分子に「浸潤先進部の簇出」を追加することとした。

 

参照ガイドライン/先行研究

大腸癌治療ガイドライン(医師用・2014年版)

 

根拠

 内視鏡的摘除においては、その根治性を病理組織検査にて評価するとともに、リンパ節転移の危険性を評価して追加手術(リンパ節郭清を伴う腸切除)の必要性を検討する必要がある。脈管侵襲は、有意なリンパ節転移のリスク因子(予測因子)であり、pT1(SM)大腸癌865例の検討においても、リンパ管侵襲・静脈侵襲はそれぞれ有意なリンパ節転移のリスク因子であった。また、pSM癌の浸潤距離がリンパ節転移率と相関することが示されており、pSM浸潤距離が1000μm以上では約10%にリンパ節転移を認めた。また大腸癌研究会のプロジェクト研究「sm癌の取り扱い」では、SM層における癌の組織型(分化度)が有意にリンパ節転移率と相関したことを報告している。これらの結果に基づき、大腸癌治療ガイドライン(医師用・2005年版)では、内視鏡的摘除標本における病理所見で、脈管侵襲陽性、低分化・未分化な組織型、pSM浸潤距離1000μm以上のいずれかを認めた場合には、リンパ節転移の可能性があることから、追加手術を考慮することを推奨している。また、pSM垂直断端陽性であった場合には、局所に癌が遺残している可能性が高いため、追加手術の適応となる。

 また、大腸癌研究会のプロジェクト研究から、リンパ節転移危険因子としての簇出(budding)の重要性が示されたため、大腸癌治療ガイドライン(医師用・2010年版)では、浸潤先進部の簇出(budding)がGrade2/3を追加切除を考慮する因子に追加した。

 以上より、病変の大きさ、肉眼型、組織型、pSM浸潤度の実測値(μm)(pT1(SM)癌の場合)、脈管侵襲の有無(pT1(SM)癌の場合)、浸潤先進部の簇出(budding)、水平断端における癌細胞の有無、垂直断端における癌細胞の有無は、癌遺残・リンパ節転移の可能性を予測する因子であり、今後の治療方針の決定に重要な情報であることから、内視鏡的摘除を受けた大腸癌患者の診療録には、これらの事項がすべて記載されるべきである。

 

 

参考文献

1.  Ueno H, Mochizuki H, Hashiguchi Y, et al. Risk factors for an adverse outcome in early invasive colorectal carcinoma. Gastroenterology 2004;127:385-94.

2.  Kitajima K, Fujimori T, Fujii S, et al. Correlations between lymph node metastasis and depth of submucosal invasion in submucosal invasive colorectal carcinoma: a Japanese collaborative study. J Gastroenterol 2004;39:534-43.

3.  喜多嶋和晃、藤森孝博、藤井茂彦、武田純、市川一仁、 大倉康男、石黒信吾、岩下明徳、加藤洋、下田忠和、味岡洋一、 渡邊聡明、武藤徹一郎、長廻紘. 大腸sm癌の取り扱い. In: 武藤徹一郎、渡辺英伸、杉原健一、多田正大, ed. 大腸疾患NOW 2004. 東京: 医薬ジャーナル社; 2004.

4.  大腸癌研究会編. 大腸癌治療ガイドライン 医師用 2014 年版. 東京: 金原出版; 2014.