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QI41 分割切除による内視鏡的摘除後のサーベイランス

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実施率の計算方法

分子:
     1年以内に大腸内視鏡検査による局所再発の有無が検査された患者数

分母:      内視鏡的摘除で分割切除となった深達度pTis(M)の大腸癌患者数

 

参照ガイドライン/先行研究

大腸癌治療ガイドライン(医師用・2014年版)

 

根拠

 pTis(M) 癌ではリンパ節転移はなく、内視鏡的摘除後の組織学的切除断端陰性の場合は再発の危険性はない。水平断端陽性の場合でも内視鏡的追加切除を行うことで、癌の遺残している可能性のある部位を切除すれば根治する可能性が高い。このため熟練した内視鏡専門医は病変の大きさが2cmを超える場合でも、内視鏡的に深達度Mと判断すれば、計画的分割内視鏡的粘膜切除(EMR)を行う場合がある。しかし、分割切除となった場合、癌部を分断する可能性があり、完全な再構築が不可能であるため、正確な病理組織診断は困難であり、pTis(M)と病理診断されてもpT1(SM)を見逃している可能性や、切除断端の評価が不十分である可能性がある。内視鏡的摘除の根治性を判断する上で、正確な病理診断は必須であり、分割切除となって正確な病理診断ができなかった場合、患者が不利益を被る可能性が生じることになる。また、分割切除では理論上、不完全切除の可能性が高く、研究報告上も局所再発率が高いとするものと、同等であるとするものの双方がある。大腸癌治療ガイドライン(医師用2014年版)では、「pTis(M)癌で水平(粘膜)断端の評価が困難な場合には、半年~1年後に大腸内視鏡検査にて局所再発の有無を調べる」と記載されている。

また、一括切除による根治的切除が行われていても、大腸癌罹患歴のある患者では、報告上2~3%程度の異時性大腸多発癌の発生が報告されており、大腸癌の内視鏡的摘除後の定期的な大腸検索は必要と考える。
以上より、内視鏡的摘除を受けた深達度pTis(M)の大腸癌患者は、分割切除であった場合には、1年以内に大腸内視鏡検査にて局所再発の有無を検査されるべきである。

 

 

参考文献

1.  太田智之, 斉藤裕輔, 折居裕, et al. 【大腸腫瘍内視鏡的切除後の局所再発腺腫・m 癌を中心に】大腸腫瘍の内視鏡的切除後における局所再発の実態 切除断端からみた再発率とその経過. In:胃と腸(0536-2180); 1999:611-8.

2.  松永厚生, 野村美樹子, 内海潔, et al. 【EMR の問題点】遺残再発病変と追加治療内視鏡的摘除術後の局所遺残再発病変の評価と追加治療. In: 早期大腸癌(1343-2443); 1999:27-33.

3.  小林広幸, 渕上忠彦, 堺勇二, et al. 【大腸腫瘍内視鏡的切除後の局所再発腺腫・m癌を中心に】大腸腫瘍内視鏡的治療後の局所遺残再発. In: 胃と腸(0536-2180); 1999:597-610.

4.  田中信治, 春間賢, 谷本達郎. 内視鏡治療法 大腸腫瘍に対する内視鏡的分割切除の有用性と問題点. 早期大腸癌;2:695-700.1998.

5.  Tanaka S, Haruma K, Oka S, et al. Clinicopathologic features and endoscopic treatment of superficially spreading colorectal neoplasms larger than 20 mm. Gastrointestinal endoscopy;54:
62-6.2001.