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QI42 追加手術未施行のpSM癌の内視鏡的摘除後の画像検査

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実施率の計算方法

分子:
     内視鏡的摘除後5年間、年1回の肝臓を含む腹部造影CT(行われない場合には他の腹部画像検査)、胸部CT(または胸部X線検査)による、リンパ節再発や遠隔転移再発の検索が行われている患者数

分母:      内視鏡的摘除を受け以下のいずれかの所見(脈管侵襲陽性、組織型が低分化腺癌または未分化癌、pSM浸潤距離1000μm以上、pSM垂直断端陽性、浸潤先進部の簇出(budding)Grade 2/3、(2010年1月以降の症例))を認めたが、追加手術が行われていないpSM大腸癌患者数
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(前版)

分子:
     内視鏡的摘除後5年間、年1回の肝臓を含む腹部造影CT(行われない場合には他の腹部画像検査)、胸部X線検査または胸部CTによる、リンパ節再発や遠隔転移再発の検索が行われている患者数

分母:      内視鏡的摘除を受け以下のいずれかの所見(脈管侵襲陽性、組織型が低分化腺癌または未分化癌、pSM浸潤距離1000μm以上、pSM垂直断端陽性)を認めたが、追加手術が行われていないpSM大腸癌患者数
■変更理由
「大腸癌治療ガイドライン医師用2009年版」より、内視鏡的摘除後の追加治療の適応基準(CQ 1)に浸潤先進部の簇出に関する項目が追加された。これを受けて、2010年以降の症例については、対象(分母)に「浸潤先進部の簇出がGrade2/3のもの」を追加することとした。

 

参照ガイドライン/先行研究

大腸癌治療ガイドライン(医師用・2014年版)

大腸ポリープ診療ガイドライン2014

 

根拠

 内視鏡的摘除においては、その根治性を病理組織検査にて評価するとともに、リンパ節転移の危険性を評価して追加手術(リンパ節郭清を伴う腸手術)の必要性を検討する必要がある。大腸癌治療ガイドライン(医師用・2014年版)では、内視鏡的摘除標本における病理所見で、脈管侵襲陽性、低分化・未分化な組織型、pSM浸潤距離1000μm以上、浸潤先進部の簇出(budding)Grade2/3のいずれかを認めた場合には、リンパ節転移の可能性があることから、追加手術を考慮することを推奨している。また、pSM垂直断端陽性であった場合には、局所に癌が遺残している可能性が高いため、追加手術の適応となる。また、大腸癌研究会のプロジェクト研究から、リンパ節転移危険因子としての簇出(budding)の重要性が示されたため、 大腸癌治療ガイドライン(医師用・2010年版)からは、浸潤先進部の簇出(budding)Grade2/3が追加切除を考慮する因子に追加された。

 これらの所見およびリンパ節転移の危険性について患者に十分説明した上で、患者が追加手術を望まない場合、あるいは併存疾患などにより耐術不能、または手術の危険性が利益を上回ると判断された場合等は、追加手術を行わないこともある。

 このような場合は、pT2(MP)以深癌に比べれば頻度は低いものの、リンパ節転移や遠隔転移を来す可能性を否定できないため、定期的な転移検索を行う必要があると考える。そのサーベイランス方法や頻度、期間について明確なエビデンスはないが、専門家のコンセンサスに基づき、ここでは「年1回、5年間」を指標とした。

 以上より、内視鏡的摘除を受け、病理組織学的検索にて以下の条件(脈管侵襲陽性、組織型が低分化腺癌あるいは未分化癌、pSM浸潤距離1000μm以上、浸潤先進部の簇出(budding)Grade2/3、pSM垂直断端陽性)のいずれかの所見を認めたが、追加手術が行われていないpT1(SM)大腸癌患者では、その後5年間、年1回の肝臓を含む腹部造影CT(行われない場合には他の腹部画像検査)、胸部CT胸部(または胸部X線検査)によるリンパ節再発や遠隔転移再発の検索が行われるべきである。

 

参考文献

1.  Ueno H, Mochizuki H, Hashiguchi Y, et al. Risk factors for an adverse outcome in early invasive colorectal carcinoma. Gastroenterology 2004;127:385-94.

2.  Kitajima K, Fujimori T, Fujii S, et al. Correlations between lymph node metastasis and depth of submucosal invasion in submucosal invasive colorectal carcinoma: a Japanese collaborative study. J Gastroenterol 2004;39:534-43.

3. Oka S, Tanaka S, Kanao H, et al: Mid-term prognosis after endoscopic resection for submucosal colorectal carcinoma: summary of a multicenter questionnaire survey conducted by the colorectal endoscopic resection standardization implementation working group in Japanese Society for Cancer of the Colon and Rectum. Dig Endosc. 201;23(2):190-4. doi: 10.1111/j.1443-1661.2010.01072.x.

4.  喜多嶋和晃、藤森孝博、藤井茂彦、武田純、市川一仁、大倉康男、石黒信吾、岩下明徳、加藤洋、下田忠和、味岡洋一、渡邊聡明、武藤徹一郎、長廻紘. 大腸sm癌の取り扱い. In: 武藤徹一郎、渡辺英伸、杉原健一、多田正大, ed. 大腸疾患NOW 2004. 東京: 医薬ジャーナル社; 2004.

5.   大腸癌研究会編. 大腸癌治療ガイドライン 医師用 2014 年版. 東京: 金原出版; 2014.

6. 日本消化器内視鏡学会編. 大腸ポリープ診療ガイドライン2014. 東京:南江堂;2014