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QI 8 治療法選択の患者への説明(肝障害度C)

局所療法(手術・TA(C)Eを含む)

実施率の計算方法

分子:
     期待される効果とリスクに対する説明の診療録記載がある患者数

分母:      肝障害度Cで肝移植以外の抗がん治療を受けた肝細胞癌患者数
(平成23年2月改訂) 前版を表示隠す

(前版)

分子:
     期待される効果とリスクに対する説明の診療録記載がある患者数

分母:      肝障害度Cで肝切除術、局所療法、肝動脈(化学)塞栓療法(TA(C)E)のいずれかを受けた肝細胞癌患者数
■変更理由
肝癌診療ガイドラインでは移植以外のものを勧めていないので、「肝移植以外のがんに対する治療を受ける場合」を対象とするように変更した。

 

参照ガイドライン/先行研究

特になし

 

根拠

 肝障害度C の症例に対する肝切除術や経皮的局所療法の施行は肝不全のリスクが高く、適応は慎重に検討されねばならない。実際、全国調査によると、全肝切除症例、全経皮的局所療法症例のうち、肝障害度C の占める割合はそれぞれ2%、7%と極めて少ない。また、その長期成績も肝切除術、ラジオ波焼灼療法、マイクロ波凝固壊死療法の3年生存率はいずれも50%程度であり、エタノール注入療法では37%、肝動脈塞栓療法では20%と芳しくない。ほとんどの肝細胞癌に対する侵襲的治療法のRCT がChild-Pugh分類AおよびBを対象としており、RCTは概して肝障害度の軽い例に対して行われている。肝動脈(化学)塞栓療法に関するRCTのレビューでは対象の総患者のうち、Child-Pugh分類Cは6%であり、非RCTでも9%にすぎなかった。重症肝障害例に対する治療法の良質のエビデンスはほとんどなく、またこのような侵襲的治療が肝障害を悪化させる危険性もあるため、リスクを十分に説明し、患者が納得した上で治療を行うべきである。
 以上より、肝移植以外の抗がん治療は、肝障害度C の患者に対して有効性が確立していないため、肝障害度C の患者が肝移植以外の抗がん治療を受ける場合には、期待される効果と、リスクに対する説明がなされ、診療録に記載されるべきである。

 

 

参考文献

1.  日本肝癌研究会. 原発性肝癌取扱い規約. 2nd ed. 東京: 金原出版; 2003.

2.  日本肝癌研究会. 第17 回全国原発性肝癌追跡調査報告. 京都; 2006.

3.  科学的根拠に基づく肝癌診療ガイドライン作成に関する研究班. 科学的根拠に基づく肝癌診療ガイドライン. 東京: 金原出版; 2005.

4.  Marelli L, Stigliano R, Triantos C, et al. Transarterial therapy for hepatocellular carcinoma: which technique is more effective? A systematic review of cohort and randomized studies. Cardiovascular and interventional radiology 2007;30(1):6-25.

5.  Lopez PM, Villanueva A, Llovet JM. Systematic review: evidence-based management of hepatocellular carcinoma--an updated analysis of randomized controlled trials. Alimentary pharmacology & therapeutics 2006;23(11):1535-47.

6.  Bruix J, Sherman M. Management of hepatocellular carcinoma. Hepatology (Baltimore, Md 2005;42(5):1208-36.