ホーム > 肝癌 > QI15 肝移植の適応の説明

QI15 肝移植の適応の説明

局所療法(手術・TA(C)Eを含む)

実施率の計算方法

分子:
     肝移植の可能性の説明がなされたことの記載がある患者数

分母:      ミラノ基準内、肝障害度Cで65歳以下の肝細胞癌患者数

 

参照ガイドライン/先行研究

肝癌診療ガイドライン2005年版 RQ治療アルゴリズム

 

根拠

 非代償性肝硬変の患者に対する有効な治療法は現在存在しないが、移植だけは例外で、非代償性肝硬変であっても比較的安全に行うことができる。科学的根拠に基づく肝癌診療ガイドラインでは、ミラノ基準(腫瘍径3cm以下、個数3個以下または腫瘍径5cm以下の単発肝細胞癌)を満たし、肝障害度C の患者に対しては移植療法の適応としている。特にミラノ基準を満たす肝細胞癌に対する肝移植後の生存率は良好である。また、第17回全国原発性肝癌追跡調査報告によると、肝移植の肝障害度分布は不明であるが、ミラノ基準に合致するもので3年生存率が63%であり、肝障害度Aの3年生存率(73%)には劣るものの、肝障害度Bの3年生存率(63%)とほぼ同等であった。肝移植は肝機能の低下した例に対して、肝切除と同様の成績をもたらす可能性があり、肝移植を自施設で行っていない場合であっても、患者の自己決定権を尊重し、治療法の選択肢として移植の説明をするのが適切な基礎医療と考えられる。
 以上より、ミラノ基準内、肝障害度Cで65 歳以下の肝細胞癌患者には、肝移植以外の治療法の有効性が確立していないことから、肝移植の可能性について説明され、診療録に記載されるべきである。

 

参考文献

1.  科学的根拠に基づく肝癌診療ガイドライン作成に関する研究班. 科学的根拠に基づく肝癌診療ガイドライン. 東京: 金原出版; 2005.

2.  Mazzaferro V, Regalia E, Doci R, et al. Liver transplantation for the treatment of small hepatocellular carcinomas in patients with cirrhosis. N Engl J Med 1996;334(11):693-9.

3.  日本肝癌研究会. 第17回全国原発性肝癌追跡調査報告. 京都; 2006.