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QI19 全身化学療法

全身療法

実施率の計算方法

分子:
     TA(C)E適応外または不応であることのカルテ記載がある患者数

分母:      分子標的薬治療が行われた肝細胞癌患者数
(平成23年2月改訂) 前版を表示隠す

(前版)

分子:
     「肝切除術、局所療法、肝動脈(化学)塞栓療法(TA(C)E)のいずれもが施行できない」ということ、および、「化学療法の効果に関するエビデンスがない」ということを説明された文書がある患者数

分母:      全身化学療法が行われた肝細胞癌患者数
■変更理由
分子標的薬の登場により、今後は全身化学療法の第一選択になることが予想され、全面的に変更する必要があると考えた。分子標的薬を使用する場合にはTA(C)Eが、「効果不良、困難などの記載があることをQIとした。

 

参照ガイドライン/先行研究

肝癌診療ガイドライン2005 年版 RQ 36、RQ 37、RQ 38

 

根拠

 科学的根拠に基づく肝癌診療ガイドラインでは、化学療法は手術、肝動脈塞栓療法(TAE)、経皮的局所療法の効果が期待できない例を対象に行われているが、効果が一定したものはないとしている。切除不能肝細胞癌に対するドキソルビシン単剤とPIAF(ドキソルビシン/シスプラチン/IFN・2b/5-FU)を比較したRCTでは、腫瘍の消失した例は皆無であった。また、進行肝癌を対象にオクトレオチドとプラセボを比較した試験では生存率に差はみられず、手術や局所療法の適応とならない進行肝癌を対象とした多施設二重盲検ランダム化比較試験でもオクトレオチド群とプラセボ群で生存率に有意差を認めなかった。ゲムシタビンについては有効性が疑問視されている。
 しかし、総論でも述べたとおり2008年6月に根治治療不能進行肝癌に対する分子標的薬sorafenibの生存率をアウトカムとした有効性が報告され、2009年5月に保険収載された。この根治治療不能とは手術や局所療法を意味するが、それらが適応外で、かつすでに有効性が確立されているTACEが適応外または不応となるような進行肝がんには、sorafenibを標準治療として扱ってよいと思われる。
 以上より、分子標的薬療法が行われる患者は、TA(C)Eが適応外(すなわち肝切除術や局所療法も適応外であることを意味する)であることが説明され、それがカルテに記載されるか、または文書が診療録に存在するべきである。

 

参考文献

1.   科学的根拠に基づく肝癌診療ガイドライン作成に関する研究班. 科学的根拠に基づく肝癌診療ガイドライン. 東京: 金原出版; 2005.
2.  Yeo W, Mok Tony S, Zee B, et al. A randomized phase III study of doxorubicin versus cisplatin /interferon alpha-2b/ doxorubicin/fluorouracil (PIAF) combination chemotherapy for unresectable hepatocellular carcinoma. Journal of the National Cancer Institute;97:1532-8.2005.

3.  Becker G, Allgaier H-P, Olschewski M, Zahringer A, Blum Hubert E. Long-acting octreotide versus placebo for treatment of advanced HCC : a randomized controlled double-blind study. Hepatology (Baltimore, Md);45:9-15.2007.

4.  Yuen MF, Poon RT, Lai CL, et al. A randomized placebo-controlled study of long-acting octreotide for the treatment of advanced hepatocellular carcinoma. Hepatology (Baltimore, Md;36:687-91.2002)

5.  Pan DY, Qiao JG, Chen JW, Huo YC, Zhou YK, Shi HA. Tamoxifen combined with octreotide or regular chemotherapeutic agents in treatment of primary liver cancer: a randomized controlled trial. Hepatobiliary Pancreat Dis Int;2:211-5.2003.

6.  Guan Z, Wang Y, Maoleekoonpairoj S, et al. Prospective randomised phase II study of gemcitabine at standard or fixed dose rate schedule in unresectable hepatocellular carcinoma. British journal of cancer;89:1865-9.2003.

7.  Llovet JM, Ricci S, Mazzaferro V, et al. Sorafenib in advanced hepatocellular carcinoma. N Engl J Med 359: 378-390, 2008.